上野千鶴子氏は、「おひとりさまの最期」(書評で見たもので、著書はこれから読みます)で、「命より大事な価値はない」と述べられています。氏は、女性の自立、障がい者や高齢者、福祉労働に関わる人びとに常に暖かいまなざしを注ぎながら、多くの著書や理論を作り上げてこられた社会学者です。
ここでは、「在宅ひとり死」の選択肢をつくるという主張です。「ぼけても垂れ流しになっても、そのまんまでいきていていいんだよと言ってあげること、弱者が弱者のままで尊重されて最後まで生き抜ける社会を作ること」を目ざして、「当事者主権」と「選択縁」という考え方を提起されています。
「私のことは私が決める」という当事者主権の思想は、ピープルファーストと同じですが、障害者権利条約に明確にされています。まったく同感です。
「選択縁」とは、脱血縁、脱地縁、脱社縁の自分で選んだつながりであると述べられています。介護の社会化を後退させ、家族介護に押し戻そうとする国家政策には組しませんが、自分でつながりをつくることは大変むずかしいことだと思えます。血縁、地縁、社会縁と自分でつくったつながりの織りなす場所で、安心して「死」を迎えられるよう、私たち社会福祉に関わるものがその環境をつくること、そういう思いを抱きながら、何ができるか、何をするかを考えていきたいと思います。